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キラキラ

第30章 hungry 2

怒濤の快進撃とはこのことか。

いつも以上の集中力と団結力で、俺らの学校は、強豪校を次々と倒し、着々とトーナメントを勝ち上がっていった。

一試合終わるたびに、ヒートアップしてゆくような、不思議な感覚。


ボールが面白いほどに、ゴールネットを揺らす。


雅紀とのコンビプレーが、超気持ちいい。

二宮のパス回しも絶妙。



「櫻井先輩ナイッシュー!!」

「相葉先輩もう一本!」


ベンチで応援してくれる一年生からの歓声を浴びながら……ついに俺らは決勝まで勝ち上がった。




「いけるのか、あいつ」


俺は、首もとをアイシングしている二宮に目をやり、雅紀の腕を引っ張って小声で聞いた。

雅紀は困ったような顔になり、唇をかんで考えるように眉をよせる。


徐々に、二宮の体力が落ちていってる気がする。

笑顔も、チームを鼓舞する声量も、なんらかわりないようだが、同じコートで試合をしていると、……わかってしまう。

この時、この位置にいるべき場所に、さっきの試合で、二宮は初めて遅れをとった。

足がついてこなくなってるんだ。
ポーカーフェイスを保ってるけれど、おそらくそろそろ限界のはず。


「……俺は……あいつが何も言わないなら、このままやらせたい」


ごめん、私情が入ってるかもしんない……と、雅紀はうつむいた。


「いや……」


俺は首を振った。

ここまで、このメンバーで組み立ててきたゲームは、二宮の活躍なしには成り立たなかった。

あいつのポイントガードとしての、ゲームメイクのセンスは、試合を積み上げるほどに磨かれてきてて。

シューティングガードの俺と、スモールフォワードの雅紀を、上手に使い分け、俺らの動きやすい位置にピッタリとパスを回してくるから、俺らの攻撃も冴えるのだ。


……仮に。
今、別のやつが代わりに入ったとしても、今のこのリズムが保てるとは思えなかった。


それならば、最後までさせる方がいいように……俺も思った。


「いいよ。あいつが大丈夫って言うのならこのままでいこう」

「……ほんと?」

「このメンバーで……勝ちたい」

「……俺も」



ひそひそと雅紀と話していたら、ドリンクを飲んでいる二宮と、目があった。

ちょっと迷って、小さくガッツポーズをしてみせたら、無邪気なVサインがかえってきた。


……うん。大丈夫だ。

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