テキストサイズ

sugar-holic2

第16章 酒の力を借りなくても

ベランダが一段低い位置に当たるのか、背伸びをしなくても簡単に倉田くんの顔に手が届く。

「あったかい」

倉田くんがぼそりと呟いて小さく笑いをこぼした。

「やっぱり冷えてるんじゃないの?」

「なら、暖めて下さいよ」

目を細めて微笑んで…本気で言ってる訳じゃないのは表情で分かる。

けど…

「そうだね」

薄く微笑みを浮かべると、背伸びをして倉田くんの唇にそっと口づけた。

唇じゃ正確な温度なんか分からない。

柔らかくて、ほんのり温かくて…

唇を離して、至近距離で見つめあって、まず発した一言は

「…ヤニ臭い」

淡々と告げると、倉田くんが眉を寄せた。

「さっきまで吸ってたんで」

「うん。知ってる」

目を細めてニヤリと笑うと、珍しく倉田くんが気色ばんだ。

「…っ!!なら煙草吸いに行く前にしろよ!」

「ごめん…でも、今、したかったんだよね」

フフッと笑いをこぼすと、倉田くんの目を見て、ちゃんと言った。

「友紀の事、好きだから」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ