ビタミン剤
第2章 Cherry
たぶん自宅で2人きりなら、場所なんて
選ばず土下座だって
なんだってするくらいの勢い。
2日間おさわり厳禁
今夜、明日の晩、
翔ちゃんは禁酒
あと、
今夜は徹夜でゲーム
むむ、んん、
うーん致し方無い。
了解ですの返信をしたら
微笑みながらようやくドアを
開けてニノが出てきてくれた。
「さてと、行きましょっか。」
「はーい
ニノほんとにごめんね。」
「あーあ、今夜のハンバーグ
楽しみだなぁ。
1番高いヤツ強請ってやろ。」
腰に手をあておおげさなくらいに
さすりながら歩き出すニノ。
入口の扉を開ける前に立ち止まるから
危うくぶつかりそうになって、
体勢を崩した俺の頬に
チュッ!
これで仲直りしたからねって
耳許で囁くように言ってくれた。
右頬を押さえながらニヤけた顔して
下僕のように後ろからついてく俺。
足を止めたニノに並んで立ち止まると
小さな声で
「あ、そうだ翔ちゃんさぁ、
さっきのさくらんぼの差し入れ
残ったら持って帰りなよ。」
「え?なんで?」
「ふふふ、ちょっとは
練習して上達してくださいよ。
強引に押し付けるだけの
ぶちゅう!
きつーく吸い付くだけの
むちゅう!
みたいな勢いだけで、翔ちゃん
キステクニック
なんてちっともないですから。」
「うわあニノ、ひっど!
マジへこむし、落ち込むわぁ。」
撫で肩で落とす肩なんてあんまり
ないけど、大袈裟にうなだれて
ガックリしてみせる。
ニノの流し眼がうれしそうに
サディステックな色を滲ませながら
俺の耳元に囁く言葉は、
「あのさ、翔ちゃんはめちゃくちゃ
タフなんだからね。
あとは、
キスのテクニックさえ身に付けたら
最強の無敵になるでしょ。
そうなったらさ
もう俺、翔ちゃんの虜になっちゃって、
貴方から離れられなくなるでしょうが。」
うわうわー
なにこのサイコーの殺し文句?
やりますとも!
死ぬ気で修行してやるぜ。
絶対最高最強のキステク身に付けてやる。