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ビタミン剤

第3章 修行




修行する




1行だけのメール本文。

女子力のある松潤のきらきらな
可愛い系メールとは大違いな、
愛想もクソも文字数も無い。
つうか、主語述語すらないし。
たぶん俺以外の人間には、
意味不明なやつ。

だけど俺には十分に伝わる内容。



咳払いで
顔がにやけるのを誤魔化して、
今夜の段取りを素早く算段し始める。



カメラが回りだすと、
誰より表情豊かに笑って、
するどい突っ込みをしてみたり
時には大声を張り上げたり
全身を使ってエンターテイナーを
コミカルに演じる。

楽屋に戻ると、
見つめるのはゲーム画面だけ。
メンバーと向かいあいながらの
談笑とかはまずなくて。
ゲームに集中しながらテキトーに
会話に参加してくるってスタイル。





俺の今夜のあがりは11時予定で
ニノと合流できるのは12時前位。

さてと、返信しとかないと。


了解しました。
では、12時頃そちらに迎えに
行くので、到着五分前に
またメールします。
食事はどうしますか?



マネージャーみたいだよねと、
相葉ちゃんにはいつも笑われる
俺のクソ真面目なメールの文章。






帽子を深く被りゲームをしながら
道路に佇む姿にアイドルのオーラは
ほぼゼロ。
気怠そうな動作で隣りに座り込んで
きた。お疲れさまと声をかけると
以外に乾いた声での返事。



「遅くにありがと翔ちゃん。
今週もお疲れさまでしたね。」



「お互いにね、お疲れニノ。
少し眠っててもいいよ。」



「うん。」



肩口にしなだれかかるニノの
さらさらの髪の香り。
静かな寝息を妨げないように
携帯画面に目を落としながら
何時の間にか俺も
心地よい揺れに身体を委ねた。



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