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ビタミン剤

第11章 innermost




深夜のタクシーの中
携帯から送信するメールの本文をチェックして
読み返す。
我ながらの出来映えに顔がにやつきそうになり
口もとを引き締めながら最後に

おやすみ潤
今夜も愛してるよ
LOVEハニー

はい、送信っと。

報道番組がある月曜日から火曜日。

必ずホテルに宿泊することにしてるから
今夜は自宅で独り寝でさみしく留守番を
してる潤に、送ってあげるおやすみメール。



「おかえりなさいませ
こちら部屋の鍵です、どうぞ。」

「ありがとう。」


毎週同じ部屋を年間契約しているので
ホテルのフロントでも名前も呼ばれないし
スムーズに部屋まで上がれる。

だからさっきロビーで視線のようなものを
感じたのは久々だった。


エレベーターの最上階を押す。
扉が閉まりそうな時、駆け足で1人の男が
走り込んで乗り込んでくる。
俺のすぐ背後に立つ帽子を被った男。


恋人の潤でさえこのホテルに呼ぶことは
なくて、ここでは1人の時間を堪能する
ようにしている。

なにもない空間だからこそできる
俺にとっても貴重なひと時。



なのにそれを1人だけ邪魔する奴がいた。

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