ビタミン剤
第14章 day off
「あそうだ、今度ぜひ櫻井家のおふくろの味、お義母さんの手料理教えてほしいです。」
「まあ、どうしましょう!
嬉しいわ、いつでも来てね。」
ゴホゴホ、ゴホッゴホッ
やたらと咳き込みだすオヤジ。
「いや、それはちょっと和也くんもいろいろ多忙だし、和也くんの美味しい味付けをだな、おまえ流にしたら、なんだ、その翔が大変なのことに…」
「あなた!」
食事の後のリビングでの穏やかな団欒。
海を相手にしながら和也とオヤジが笑ってて、それを見て笑うおふくろがいて、その輪の中で俺も笑ってる。
オヤジと海がリビングでごろりと眠り始める傍らで、おふくろが俺のガキの頃のアルバムを山ほど引っ張り出してきてうれしそうにニノに見せだす。
ニノも本当に楽しそうな笑顔
ちらりと時計に目をやって
そろそろ帰らないとって視線をニノへ送ると名残惜しそうにおふくろとの談笑を切り上げる
「そろそろ帰ろっか。」
「そうですね。」
完璧な団欒の風景画をもう少しだけ眺めてたいかなぁって気持ちもあったけど
ニノが差し出す左手が俺を求めてくれてる。
帰ろう、俺たち2人の愛の巣に
手土産もなにも持って来ずだった俺たちに、おふくろはなんだかんだ持って帰るように紙袋に入れて
後部座席には中身がぱんぱんの紙袋が3つ。
オヤジに煽られてビールを飲んだ俺に
ハンドルは握らせられないって帰りはニノの運転
をしてくれる。
角を曲がり手を振って見送ってたおふくろの姿が見えなくなった。