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ビタミン剤

第30章 ムテキのヒーロー


「翔、好きだよ。誰より翔が好きだ。
ずっと傍にいるから、そんな顔するなよ。
翔、おいらだけの翔ちゃん」


ぐっと下唇を噛み締めてるから
指先でそっと撫でてやると力が抜けて
少しだけ開いたくちびるに重ね合わせた。
麻痺したように動かなかった翔ちゃんの腕が
俺の身体に触れてきた。


角度を変えながら出来るだけ長くゆっくりと
深いキスをしてあげる。
意識下の奥底に沈んでる翔ちゃんを上昇させて
蘇生する様に繰り返し名前を呼んでやりながら
くちびるを重ね合わせ続けた。



「…んん…んぁ、さと…し、くん、智っ」



蘇生成功!
よっしゃっ浮上してきたっ
意識が戻った櫻井翔をしっかり確保してやる。

「翔、翔ちゃん。おはよ」

「…智くん

……あっ…ごめん
俺…また、ぼんやり…してたの?」

「みたいだね。みんなすっげえ心配してたよ。
翔ちゃん、
今日はおいらんちに一緒に帰ろうな」

「…うん。智くん、ありがとう。
智くん…逢いたかった」


翔ちゃんの眸から
ひと粒だけ溢れた涙はキレイだった。



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