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ビタミン剤

第1章 ビタミン






「お、おいらも、翔ちゃんのこと
大好きだよ。
ずっと好きだったもん。
でも、なんで?だって…だって。」



お互い恋心は
もうずっとずっと前から。
心の奥底の小箱の中に封印してた。
鍵なんて始めから用意してなくて、
核心を認めようとはせずに仲間としての
居心地の良さをずっと選んできてた。



ふざけ合ってじゃれ合いながら
このままが良いのかなあって。



でも、もう我慢しない。
今は愛を育むことを急ぎたい。
だって俺たち2人は
ずいぶんな遠回りをしてきたから。



「ずっと気がつかなふりでいようと
思ってた。でも、やっぱり無理だ。
智くん、めちゃくちゃ好きだよ。」



「翔ちゃん……。」



「ずっとそばに居てよ。
ずっと俺のそばに居て欲しい。
いつでもそばにいて智くんにふれたい
抱きしめたい、いっぱいキスしたい。」




俺の言葉に何度も何度もうなづく。

智くんの欠壊してしまった涙腺がこぼれ
落とす大粒の涙は、止まることがなくて
慌ててティッシュを取りにテーブルの上
に腕を伸ばした。



床の転がってる蜜柑の俺の視線が
智くんを泣かせている俺に対して
憎々しく睨みつけてきてる風に見えた。



しゃくり上げながら泣く智くんの
背中をさすってあげて、
少し性急過ぎた告白を
耳許で謝ってみる。


「ごめんね、智くん。」


「バカ!
翔ちゃんのバカバカバカ!!
収録前にこんなにぐしゃぐしゃ
に泣かせたらダメだよ。
メイク出来なくなるじゃない。」


ごめんねと謝りながら智くんの
頬に伝う涙をくちびるで拭うと、
今度は智くんの
両手が俺の首にからまり
ぎゅっと抱きついてきてくれた。



「翔ちゃん大好き。
おいらの頬っぺたつねってみて。
これって夢?
夢じゃないよね?」



マジマジと自分の頬をつねりながら
痛い痛いと呟く智くん。
ほんとにかわいい人なんだ。



ああ

やっぱりこの人だ。

俺を全部を充してくれるのは

この人なんだ。


智くん

貴方が俺のビタミンだよ。

貴方は俺だけのビタミン。




おわり



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