ビタミン剤
第30章 ムテキのヒーロー
Sside
エレベーターの中も、帰りの車の中でも
ずっと手を繋いでてくれた。
自分の中で智くんの
ぬくもりがどんなに不足してたのかがわかる。
指先から身体中に伝わる
智くんの思いやりで満たされていく感覚。
もっと智くんとぬくもりを分かち合えれば
こんな弱さは全部吹き飛ぶのかな?
それとも俺が俺で無くなってしまう?
正直言うと、怖いんだ
智くんと肌を重ねることで俺の中の何かが変化
してまうことが…
小さな頃から臆病な性質で
いろんなことが怖くて仕方なかった。
夜の闇、高いところ、苛めっ子の同級生
もう、泣かないのお兄ちゃんでしょ
しっかりしてるはね、さすがお兄ちゃん
お兄ちゃんでしょ、我慢してね
言い続けられてきた台詞に
なるべく自分を寄せていく努力すること。
自分をそこに向けて合わせてく事が
最優先事項だと信じてた。
だってそうすれば褒められるし
叱られないし、
賢いね、エライねって撫でてもらえた。