ビタミン剤
第30章 ムテキのヒーロー
「ただいまっと
ほら翔ちゃん、靴脱いではいんなよ」
「うん、お邪魔します」
「ただいまって言ってよ
せっかく2人で帰って来たんだからね」
「ふふ、ただいま智くん。」
「よっしゃぁ
おかえりのチュゥができるっ!」
智くんのくちびるが近づいてきた
目蓋を閉じてその柔らかい感触にふれる
なぜだか涙がこぼれ落ちてきた
今度の涙は止まらない、頬を伝って流れ続けるもの
「やっと泣けたね。
声出して泣いていいからさ。
誰も居ないし、たくさん泣いていいんだよ。」
肩を抱くようにして
リビングに連れて行ってくれる。
いつものソファの定位置に座らせてくれて、
ミルク多めのカフェラテを
お気に入りのマグカップで作ってきてくれた。
あたたかなカフェラテを飲んでも
頬を静かに流れる涙は止まらない。
「翔ちゃん、ちょっと待っててね」
着替えにでも行くのかな
智くんはリビングから出ていった。