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ビタミン剤

第35章 縁結びの神さま


「智くんっグスン…智くん…グスン
なんで怒ってんの…言ってくれなきゃ…
わかんないよ…ヒック…」

「…………翔ちゃん、昨日の野球大会で
おにぎり配ったでしょ?」

えっ?
えええぇ!!
ウソォォォオ?智くんが喋ってる?!

録音機能は知ってるけど、会話ができる
機能なんてなかった筈


「…うん、配ったけど
サトくん?おはなしできるの?」

「翔ちゃんのバカ野郎!
おいらだってまだ作ってもらったことないのに、
なんでたくさんの後輩に配ったりすんのさっ」


「やっぱり、智くんの声だぁ…智くーん…
ちゃんと顔が見たいよ、声だけとか
さみしいよぉ
智くーん…グスン…ごめんなさい…」

智くんの本気モードの怒り声きいてたら
本気モードの涙がこぼれてきちゃって
ついに堪えきれずに泣き出してしまう。

「おいら怒ってんだかんな!」

大っきな声で
リビングに飛び込んできた智くん
その腕にはサトくんによく似たクマのぬいぐるみ
ソファに座ってる俺の前で仁王立ち
睨みつけてくるからぶん殴られるかと
思って目を瞑ると
ぎゅうぎゅう抱きしめてこられた


ムギューって締め付けて痛いくらいの力
筋肉隆々の腕じゃあないのに
俺の身体だって簡単に持ち上げて抱っこして
ベッドに連れてってくれる腕っぷしを
持ってるんだ。




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