テキストサイズ

ビタミン剤

第36章 続 縁結びの神さま



くっそぉっっ!
おいらだってまだ食わせてもらってねぇのに!
なんで先に後輩なんかに手づくりでおにぎり
差し入れしちゃうわけよ??

怒鳴り声あげて叫んでた。



それでひどく苛ついてきて
玄関先で帰ってきた翔ちゃんを早々に怒鳴り
つけたってのが事の顛末…。



ベッドの上のくまのショウタンはこの間店で
見つけたぬいぐるみ
まだ翔ちゃんには見せてなくって今夜新しい
家族が増えるよって
サプライズしてあげようと思ってたんだけど



背中のスイッチを入れると



『うゔっグスン…グスン…

サトちゃん…
智くんに逢いたいよ
どうやったら仲直りできるのかな

ふぇ…うぅ…智くーん…
なんで起こってんのお……
わかんないよぉ…えぐっ…グスン… 』




翔ちゃんが泣きながら
ぬいぐるみのサトくんを抱きしめて
おいらのこと呼んでるのが聴こえてきた

去年はドラマに映画にマジで忙しくって
なかなか家に帰れない事も多くあって
翔ちゃんが夜、
独りきりでさみしくなんないようにって連れて
帰ったおっきめのクマのぬいぐるみ。

でっかいリボン付けて贈ったら嬉しそうに
じゃあ名前はサトくんにするねって
そう名付けたのは翔ちゃんだった。




そのサトくんにぎゅーってしがみ付きながら
泣きじゃくってる翔ちゃんの姿が目に浮かぶ

おいらの録音してある声を
何度も何度も繰り返し聴いてるみたいだ。


ヤバい…声だけでも可愛過ぎだわ


新しく買ったぬいぐるみのショウタンには
新機能が追加されてて
内臓してる音声モニター機能でリビングの
サトくんにも新しく埋め込んだ機械で
翔ちゃんの声が聞こえるし、
こっちの話し声も向こうに伝わるってこと。

そう、別の部屋にいても声のやり取りが
できるってわけ。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ