ビタミン剤
第37章 サンクチュアリィ
Oside
テラスで星空を眺めながらバーベキューをして
日が暮れた山あいの気温は一気に下がり用意した
薪の出番がきた。
暖炉に火を灯していると、
優しいピアノの旋律が流れてくる。
己れの器の狭さ、 力量の無さ故に
幼いままの自分では受け止めきれなかった
一途で無垢だった翔の想い
赤い橋の上で
バイバイって手を振って振り返る事もせず
おまえに別れを告げた馬鹿だったあの頃の俺。
どんなに会いたくても
会いに行けなかった
だけど、ずっとおまえだけを想い続けてた
凍てつく夜空の星に誓って
一人前の男として翔に相応しい男になって
必ず迎えに行くと決めていた。
百忍通意
耐えらない困難、超えられない限界
おまえを手に入れる為なら
そんなものは何も無かった
自分を見つめて己れの弱さと向き合うことで
一歩一歩おまえへの距離を詰めて来れたんだ
愛する翔、ただ1人おまえの為に
収録の最中に怪我をしたと聞き
居ても立っても居られず、
気がつけばコンサートの楽屋に押し掛けてた。
あまりの緊張と久々に抱く感覚にうまく加減を
してやれなくて力づくで抱きしめてたあの日
准一くん… ずっと貴方を待ってた
俺の腕の中で言ってくれた愛しさと
おまえが流したとめどない涙を俺は生涯忘れは
しないと誓った。
きれいな旋律、懐かしい調べ
翔の指が優しくピアノの鍵盤を弾いてる。
「翔、寒くないか?」
「うん、平気。
ねえ、准一くんのやさしい声の響きで
もう一度あの歌を聞かせてください。」
「ああ、唄ってやるよ。」
翔、おまえだけの唄声で俺の中の
ありったけの愛おしさと狂おしいほどの恋心を
おまえの奏でる音色にのせて聞かせてやるよ。