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ビタミン剤

第38章 愛のある風景



「智っもういいから!
さっさと帰って来て!
虹の根元まで行かなくてもいいから…」

虹の根元にはものすごい宝物が埋まってる
西洋のある国の言い伝え

でも、俺の宝物は埋められてたり
掘り起こしたりするもんじゃない。


「…お願い…智、行かないで
俺のところに戻ってきてよ
はやく…帰って…ぇ…きて…ぇ…さと…」

「かずおまっ?泣いてんのか?!」


電話の向こうでおじさんがかなり慌ててる様子。

涙に滲む青空と涙でゆがんで見える虹
掴んでるシャツを船に向かっておもいっきり
振ってみせた。

昨日智に脱がされたお気に入りの黄色いシャツ
遠目でもあざやかに見えるように
救難信号みたいに遮二無二に振りまわすよ。


ここに居るから
はやくここに帰って来いっっ


やがて方向転換した船
まっすぐこっちに向かって動きだす。


愛しい男を乗せた船が
すこしづつすこしづつ大きくなって見えてくる


苦手な青空と白い雲
眩し過ぎる輝きにあざやか過ぎる虹
不健康な俺にはどれも似合わないものばかり。


だけどそこに貴方がいる
大嫌いな海の上に大好きな男を乗せた船が
浮かんでる。

1枚の絵葉書みたいに切り取られた風景


愛しい男、大野智
俺の宝物の貴方が居るそこが
俺のなにより愛しい風景になるんだ。


はやく…戻って来い
魚なんかと戯れてばっかしないで
もっともっと俺と戯れ合ってよ


たまには青空の下とかで愛しあったりしてみない?
せっかくの旅先だから
智と2人だけの愛しい風景をつくりたい。





おわり

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