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ビタミン剤

第39章 ノクチルカ



「じゃあ、また迎えに来るとき連絡するね」

「うん、潤も顔見せたらいいのに。
きっとあいつらも喜ぶよ」

「遠慮しとく。敵に塩を送るみたいになりそうだしね。あ、そうだ翔、首のショール外しちゃだめだよ。」

「えっ?う、うん」


いたずらな笑みの残像を残して走り去る車。

なんとなく首周りを気にしながらトイレの鏡で
見てみると首の付け付近、ギリギリシャツで
隠れるところらへんにある赤い鬱血の数々。


「やっぱり…エロ潤っ…」

鏡に映った自分の顔がさっきクローゼットの
鏡の中にいた貪欲で淫靡な顔に見えてきて
慌てて顔を洗い流した。




時間はすでに開始10分前
差し入れのでっかい紙袋は知り合いのスタッフに 声かけてあいつらの楽屋まで届けてもらう。

風磨のマネージャーに連絡を入れてたおかげで
俺を待ち構えてて、風磨のところまで連れていって
くれる。

「あっ、兄貴っ兄貴!
マジでホントに来てくれたんすっね!
俺、俺っめちゃくちゃうれしいっす!
今までの中で最高なコンサートになりますよ!!」

「よう、5周年おめでとう
大げさなヤツだな、とにかくがんばれよ。
おまえの演出だろ、じっくり見させてもらうからさ」


無邪気に抱きついてくる後輩の髪をぽんぽんって
撫でてやってから事務所の関係者席へとむかう。


会場の規模も、動員数も違いはあるけど
客席の熱気は最高潮に盛り上がりを見させていた。
エネルギッシュな若さ、
フレッシュで躍動感のあるダンス
5人のそれぞれの見せ場のソロ

潤の綿密で細部にまでこだわる嵐のコンサート演出を知ってるからこそ、簡単に比較は出来ない。

けれど、風磨の伸びしろを感じさせる演出は
これからが楽しみな気がした。


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