ビタミン剤
第39章 ノクチルカ
風磨、
おまえが見てる姿は偶像
憧れが拗れて絡まって恋心だって勘違いしてるだけ
ほら、よく見てごらん
俺はただのどこにでもいる凡庸な男
おまえが勝手にかけてるフィルター越しに
見誤ってるだけ
それを俺の本質って捉えられても迷惑なんだ
おまえに見せる必要も
況してや教えてやる義務も存在しない。
おまえにはおまえの唯一無二が
きっと現れるから
それまでしっかり眼を凝らしててごらん
今まではただ見間違えてただけだから
年端もいかない
おまえの経験値の無さ故の幼稚な感情
風磨に抱きしめられた時の
嫌悪感と怒りに似た苛立つ感覚とはまるで違う
潤の腕の中は目が眩むほどの心地良さと温もり
全身を安心に包まれるように、
うっとりと身を任せていられる。
潤だから
潤にだけしか込み上げてこない熱
「潤っ…迎えに来てくれて…ありがとう」
「約束だからね…さあ行こうか。」
「…うん」