ビタミン剤
第39章 ノクチルカ
「翔…おいで。」
「…ぇ…まって…潤っ……ぁ…んん…」
くちづけは深く舌を絡ませてくる本気のもの。
ここがホテルのトイレってことも、目の前に風磨がいることさえぼやけてしまう情熱的なやつ。
デニムから引き出されたシャツを捲りあげて
潤の手が優しい指使いで身体を這い回ると
昼間の熱があざやかに蘇る
「もっと見てたい?
翔はおまえのものにはならない。
この先もおまえには永遠に望みは無い。
翔が愛してるのは俺、翔は俺のもの
俺たちは2人で完結されてるから
ガキのおまえが入り込む隙間は数ミリもないよ」
素肌をさらけ出されて
見開く風磨の眸がまざまざと知る絶望
胸元、脇腹、背中
身体中あちこちに付けられてる潤に愛された痕跡。
この身体は俺のもであって俺だけのものじゃない
潤がこうしろと言うなら
俺たちが愛し合った痕を見せつけるよ。
「風磨。
おまえは弟みたいにかわいい後輩だよ。
それ以上も以下も有り得ない。
俺には潤がいる。おまえはただの後輩なんだ」
「…っ…くっ兄貴っ…けど、俺…っ」
「出ていきな。
邪魔するな、ガキにはここまでだ」
拳をぶつけるようにして乱暴に開けた扉から
走り去っていく背中。
追いかけたりはしない
してやれることは声すらかけず見送るだけ
手の届かないものに
無駄に伸ばし続けることを諦めさせる事。