ビタミン剤
第39章 ノクチルカ
ハンドル操作をする潤は上機嫌な様子で
運転していた。
あれから個室に連れこまれて消毒だよって
もう一度キスされたけど、それ以上の行為にすすむことはなかった。
潤はもしかして…
気付いてたのかも知れない
スピードをあげる車は高速を降りてからしばらくして東京湾の海岸沿いを走っていた。
「今夜はきっと見れるとおもうからさ。
翔と2人で見てみたいと思ってたんだ。」
さっきのことをほじくり返しはせずに
潤が見て見てみたいものを訊いてみると
もうすぐだからといって教えてくれない。
夜の海岸沿い
夜景ならもっと工業地帯だろうし
そんなことを考えてると真っ暗な海辺がぼんやりとした蒼色に光ってるように見えてきた
「なにあれ?イルミネーション?」
「違うよ、もう少ししたら車停めるね」
まるで海岸沿いをLEDで点灯してるみたいに
ぼんやりとしたブルーに光ってる。
でもよく見るとその蒼色の光は波間に揺れて浮かんでいる。
幻想的な光景に息をのんで見入ってると潤が肩にそっと手を置いてくるから、ほんの少しだけ
首を傾けてて潤の手の甲のぬくもりに頬で触れる。
しずかな波音
よせてはかえす波間に揺れる蒼色の光
「もしかして…これって……夜光虫?」
「正解、さすが翔くん」
「俺実際に見たの初めてだよっ、すっごい…
きれいな蒼色」
「俺もだよ。釣り好きの俳優仲間がさ、
きれいだから1度は見てみろって教えてくれたんだ。
生き物なのに不思議な輝きだよね。」