ビタミン剤
第39章 ノクチルカ
潤が簡単に説明してくれる
海洋性のプランクトンは赤潮の原因になるもので
昼間見る毒々し赤い色は汚いと罵られている生き物
ただ、陽が沈む夜半になるとまるで
別世界の生き物のようなうつくしい輝きを放つ。
石を手にした潤が波打ち際に立って投げ込むと
無限の波紋が拡がるように蒼色の光が揺れ動いていく。
「すっごい……」
「だね…良かった翔が喜んでくれて」
「潤っ、ありがと。素敵な海辺の蒼色だよ。
まるでコンサート会場みたい。」
「5人じゃなくて、2人だけのコンサート会場?」
「フフっ、そうだね。
じゃあ今度はメンバー5人で来なきゃ」
そっと潤の手にふれて握りしめた。
すこしだけ…すこしくらいなら
夜光虫の輝きは人工的なまぶしい光じゃないから俺らが手を繋いでいても遠目には分からない筈
「俺らもこんな感じなのかもしれないね」
潤のつぶやきの意味に問いかけるようにぎゅっと 手を握りしめる。
「俺らも今はキラキラして見えてるかも
しれないけど、別の見え方じゃ汚い所もあるし。
魔法の時間が過ぎる頃にはただのオヤジ集団に
なってたりするんだろうな。」
アイドルという魔法の時間は有限
俺らの後続につづくキラキラしてる奴らは
もうすぐそこ迄近付いてきてる。
後進の為に諸先輩方が切り拓いてくれてきた道を
俺らもまっすぐ歩んで来た
俺たちはその軌跡を辿って新たな奇跡を創り上げてこれた自負はある。
次世代に継承できる道しるべとして
最後までキラキラと輝いててやりたい。