ビタミン剤
第7章 人魚のナミダ
人魚姫のナミダ
波間に浮かぶ人魚姫は
遠くに見えた船の上の王子様を
一目見て恋に落ちた
きっと王子様がすごくすごく
格好良くて
人魚姫には
きらきら眩しく見えたんだ
ズキンッズキンッ
首筋に感じる痛みはどのくらい
まえから続いてたっけ?
9ヶ月前
きっかけは些細なこと。
いや、だけどそのもっと以前から
もやもやした気持ちを抱えていた。
それが爆発したのが
年明けの翔さんの誕生日前 。
「俺もう無理、もう無理だ。
悪いけど、帰って。
俺、別れるからもう二度と来るな。」
突き刺した言葉のやいばの先は鋭く
研かれて、深く抉り肉だけじゃなく
彼の心までも斬り裂いた。
「潤、
ちょっと待てよ。おい、潤っ!!」
「うるさいっ出てけ!」
怒気を孕んで睨みつけて
硬く握り締めた拳でリビングの
壁を殴りつけた。
無残に壁に穴が空き拳からは血が流れた。
「なにしてんだよ!
潤っ、おいお前、血が出てる。」
「俺に触るなっ。」
それでも強引に右手を掴んできた
無理矢理に、振り払うようにしたら
おもいっきり翔さんの顔面にヒットする。
口もとに血が滲んできていた。