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ビタミン剤

第7章 人魚のナミダ



「わかったから
お前の気持ちはわかったから。
すぐ出てくから
けど、この手の傷だけは
治療するからな。
治療が終わったら別れるし
もう二度とここへは来ない。」



救急箱を持ってきて消毒して
くれて、優しくガーゼを当てて
きつめに包帯を巻いてくれてから

「今までありがとうな
いろいろごめんな。
荷物は適当に処分してくれていいから。」

そう言うと、
唇に血を滲ませたまま
静かにリビングから立ち去り
玄関のドアが閉まる音がした。



呆気ないくらいの別れ。
別れたからって顔を見ないわけに
はいかない。
俺らはグループで活動してるし
レギュラー番組だってあるんだ。



今でもケンカはあったりはした。

それはいつも発端は俺からのもの。
だいたいは
言いがかりみたいなヤツとか
勘違いだったり
けど、今度はホントに本当の別れ。


「…翔さん。」



携帯の電話帳からその名前を削除しよう
とすると、
指先の震えは止まらなくて
気がついたら、両頬に静かな
涙が伝って泣いてた真夜中だった。


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