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きみがすき

第14章 *ジュウサン*

*大野*




休日

予定が無い日はダラダラと昼過ぎまで寝てるんだけど、余りにも明るい陽射しに目が覚めた。

あ…そうか。
昨日ベッドで月を見ていて、そのまま寝ちゃったんだ。

しばらくベッドの上でゴロゴロしてたけど、もうすっかり目が冴えてしまったので、仕方なく起きることにした。


腹減ったな。
キッチンでコーヒー用のお湯を沸かしながら何を食べようか考えていると

「にゃお」

と小さく聴こえた。

一旦、コンロの火を止めてベランダに向かう。

「久しぶりだね。」

そう俺が語りかけた先には、茶色よりも黄色に近い毛色の小柄なねこ。

ニノに似てるなって思ったねこ。

誰かを呼ぶように甘えた声で鳴いてたわりには、俺の顔すら見ずにベランダの真ん中に堂々と鎮座する。

「ふふ。ちょっと待ってて。」

それを聞くか聞かないかは気にせずに、俺はキッチンから、出し用の煮干しを3匹つかむ。

居るかな。とベランダを覗くとさっきと変わらない姿勢で座っている。

「ほら。」
と、少し離れた場所に煮干しを置く。

ねこは「なんだ煮干しか。」と言いたげな表情のままゆっくり歩みを進め、クンクンと匂いを嗅いで、かじがじとそれを食べ始めた。


俺は、室内の床に寝そべりながらその姿を眺める。

きっと食べたらすぐに居なくなっちゃうんだろうな。

最後の煮干しを食べ終えたねこは、手で器用に口の回りをくるくるし、その手を舐めた。
そして、すぐに立ち上がりベランダの柵に飛び乗った。

ほうらね(笑)

「またね。」

そう俺が声をかけると、ねこはくるっと振り返り

「にゃおん」

ありがとう。とばかりに可愛い声で鳴いて、あっという間に姿を消した。

ほうらね。ニノにそっくり(笑)


床に降り注ぐ暖かな陽射しは眠気も誘う。

このまま少しだけ寝ちゃおう…


♪~~♪~~

もう少しで夢の中ってとこで鳴る携帯。


「…んー…」

眠い。と、出なきゃ。の狭間の中で携帯を探りだし、相手の名前も見ずに、適当に画面をスライドした。


そこから微かに聞こえたのは

ニ「大野さん!助けて!」

ニノの声だった。

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