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きみがすき

第28章 *ご*



*「はぁ…腕が……」


うぉー!鯛だ!鯛が釣れた!!
しかもこんな所で、こんなサイズが。

海面に上がってきたところを網で掬い上げた俺は、丁寧に網からだし、傷を最小限に針を外した。

クーラーボックスにギリギリで収まった鯛。

久々の鯛だ。

*「あーー疲れたぁ…」

相葉ちゃんに見せたいなぁ。びっくりするだろうな。

さばいて刺身にして食べさせてあげたい。
あ、鯛めしもいいね。



今日も…仕事だから無理だけど…
あ、でも帰りにお店寄って……いや…邪魔するだけか。

*「ねぇ!おにーさん!」


「え?」


*「無視しないでよ!」

クーラーボックスから顔をあげれば、そこには
横たわる学生?いや社会人?くらいの若い男。


…あ、忘れてた。

*「俺さぁ頑張ったんだけど。お礼とかさ報酬とかないの?」
そう言って寝転がりながら俺を見上げる。


……お礼…報酬…

俺は、また視線を下げてクーラーボックスの中で、まな板の上の鯛状態になっている鯛を見た。

「…………………………この鯛、いる?」


*「……。」


「……」


*「……っ~~…っもう!やめてよそんなCMに出てたチワワ見たいな目で見るの!
つーかいらないよ!俺が貰っても、もて余すわ。」
はぁ…と大きく溜め息をついた。

「ほんと?あーー良かった!欲しいって言われたらどう言いくるめようと。
あ、さっきはありがとう。」


*「…心の声が漏れてるよ…
てかお礼はついでかよ。」

よっ。と起き上がった男。
見ればTシャツにジーンズ姿。
とても釣りに来ていたようには思えない軽装だ。


と、
「お、ヤンチャ坊主。また来てんのか。」

THE海釣りの格好をしたおじさんが話しかけてきた。

*「ん?あー…上田のおっさん。」


「上田さんな?おっ。が余計だ。おっ。が。
ん?べっぴんさんじゃねーか。
この子が?待ち人か。」
と俺をまじまじと見る。

待ち人?

*「え?…あはは!違うよー。このおにーさんはナンパナンパ。」

ナンパ…

「なんだ男か。
はぁ最近の若者は…
ま、早く見つかるといいな。」
がはは。と大口を開けて笑いながら去っていったおじさん。

*「うん。ありがとー。またねー。」
とニコニコと笑って手を振る男。




……

なんだろ?
この人…どこかで見たことあるような気がする。

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