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きみがすき

第1章 *ゼロ*

*二宮*



見馴れたエレベーターに乗り、会社がある階のボタンを押す。

入社して3年目。仕事にもだいぶ慣れて、今では段々と1人で任されることも、増えてきた。
仕事はお金を稼ぐためのものって思ってたけど、最近はやりがいっつーか、楽しいなんて思い始めてる。

それもこれも、あの人の影響かな、なんて考えながらエレベーターを降りて、自分のデスクに向かう。
目的の場所の直隣に、見馴れた猫背が目に入った。
さっきまで考えてた人が、いる筈がない時間にいて、今日朝一の会議とかってあったっけ。と頭の中を巡らす。

『いや、なかったはず。』
じゃぁなんだ?この人が俺より早く来てることなんて滅多にない。変に気になった。
背を向けて椅子に座ってるから、もちろん俺が来たことにも気がついてない。まぁ元々ボーッとしてるからね。この人。

歩くペースは落とさず、この人を観察してみる。
資料でも読んでるのか、斜め前を向いてるから横顔が見えた。
ほんと綺麗な顔してるよな。
男なのに綺麗って言うのも変だけど。整ってる?いや、やっぱ《綺麗》が一番しっくりくるな。

あ、寝癖。後頭部の髪がピョンと跳ねてる。


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