テキストサイズ

きみがすき

第5章 *ヨン*

*櫻井*




「はぁ…。」
タクシーを拾いに行く道すがら、何度目かのため息をついた。

『危なかった。油断した。』
智くんとキスしたのは、いつぶりだろうか。最後にしたのはもうだいぶ前。
きっと智くんは覚えてない。あの状態になるまで酔うと、大抵は記憶が無いから。
気をつけてたのにな…。

大学時代、真面目だった智くんは、ホントに二十歳の誕生日まで、お酒を飲もうとしなかった。大切に育ててくれた親に失礼だとか言ってね。
サークルの先輩に、何言われようとも頑として飲まない。
最後には呆れてたけど、俺はそんな芯がしっかりしている智くんが、凄くかっこ良く見えた。

いざ、お酒が飲めるってなってからの、初めての飲み会。散々飲まされて、まさか酔った智くんが、あんなになっちゃうとは誰も思ってなくて、ホントにビックリしたっけ。

その時の被害者が、俺。

もともと仲が良かった俺ら。いつも一緒にいたプラス、智くんが『大好きー。』とか言うから、皆の誤解を解くのに苦労したな。
当の本人は、次の日全く覚えてなくて、イラッとしたけど。笑

懐かしいな…。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ