テキストサイズ

Best name

第2章 ピュアな世界

ドキッとする

何だ?

聞いてみたい、是非…。


『うんっ?何…っ?』


少し声が裏返る

控え目な声で彼女が話す


『今日のこと…黙っててほしい』
『キョウノコト?って…』

『あたしが…処置に入ったこと…
緊急だし仕方なかったけど…
あたしは無資格だし
患者さんはわかってくれても
やっぱりそういうのマズイから
どこからか噂になったり
何かあると…困るから』

なんだ…そんなこと

と思いつつもオレはまた感心していた

オレは毛頭、誰に何を言うつもりもないし
まさかそんな心配を彼女がしているなんて
思いもしなかった

『うん。わかった』

余計なことは言わず
一番シンプルに答えた

『ホントに…?約束してくれる?』

くりっとした黒目に吸い込まれそうになる

『うん。約束する』

ホッとしたようにコクッと頷いた彼女は
一瞬表情がゆるんで
かすかにだが微笑んで見えた

またひとつ…更新された

この子は自分の仕事、その環境…
そして取り巻く周りの人達を
とても大切に思っているんだ

オレがドン引きしたあの獣医にも
強い信頼が…お互いにあるのだと
…少しヤケた気がした

『~~ごめん、ごめん!待たせたね
って、まだ何も食べてないのかぁ~?!』

バタバタと走ってきたソウタさんが合流して
アイ側の席につめて座る

『腹へっただろ~?二人とも
好きなだけ食べろよ~!』

結局ソウタさんが色々と注文してくれて
テーブルにズラリと料理が並ぶ

よく喋る…この男の登場で
アイは完全に喋らなくなり
頬杖をついてまた少し遠くをみているみてる
白い肌が眩しかった。

『ホラ、アイ。どっかむいてないで
食べなさい!』

サラダや肉、パスタをよそった皿を
ソウタさんが渡した

『…ほしくない』
『ダメだ!食べなさい。薬も飲めよ?
それから今日はあまり走り回ったら…』
『~~わかったから…』

ムスっとして面倒くさそうに皿を受け取ると
ちょこんと両手を合わせて
ようやく料理に手をつけるアイ

~微笑ましくもありモヤモヤとする光景だ

~~なんなんだ、この二人は…マジで
上司と部下か?ホントに

…まさか…まさかの感情は隠して
帳じりを合わせる

あとはソウタさんが喋ってくれるから
正直楽だった
ピザをほおばりながらオレに聞く

『~ところで?滝川くんは
アイとはどういうお友達?』

ストーリーメニュー

TOPTOPへ