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第1章 舞い降りた君

『お待たせしましたぁ~』

カン高い声でフロアの女の子が運んでくる酒を
テキトーにあおりながら
友人のワタルの話を聞いていた。

『でさー…オレはやっぱアレなわけでさ…◯×△□~』


ムダによく喋る男だ。
そろそろダルくなってきた。

店も少し落ち着いて来た頃
カウンターの…ママらしき女が席にきた。

『ごめんなさいね~バタバタしちゃってー
ミカです~』

名刺を渡される。
ほとんど泥酔してるワタルを任せて
放っとこうと思った。

『アイ~!』

ママのミカがフロアの女を呼んで
オレらのテーブルを差して何か言っている。

呼ばれた女の子が酒とツマミを持って
席に歩みよってきた。



コトン…


テーブルに酒が手際よく置かれた。

"?"

ミニスカートがオレの目線にくる。

無言。オイオイ。

他のスタッフとの差に若干空気が止まるが
ミカがすぐに口を開く。

『サービスです!よかったら~』

『え…あぁワルイね』


少し驚きつつ返答する。


『チョット!アイ~、アンタね~…』

ミカがツッコミを入れてごまかした。


ブアイソ…というのか
無表情な女が目の前に立っていた。


ようやく目でとらえたそれを…なんだ…
一瞬固まった。


『かぁゎぁいぃ~~~…』

つぶれかけてたワタルが切り返した。


『おにんぎょぅ みたい~
ココ!ココ…座って!』


自分の隣の椅子をひいてワタルが誘う。
代弁された気がした。

〃アイ〃
と呼ばれた女は
ワタルの言葉に耳をかさずに立っている。


オイオイ、勘弁してくれよ。
こんなブアイソなやつと酒飲むなんて御免だ。


なんてオレの心配は取り越し苦労。
アイは一切応じる気はなさそうだ。

酔いがスーっと覚めてしまいそうになった。
…と言うのは少し卑屈か…


一瞬、アイという子に目を奪われたのが本当だ。

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