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第3章 君の十色

トドメをさされたオレは
変な熱におかされたように
ボーっと歩いていた
小石を蹴って歩く…

…反則だよなー

あんなの見せられたら…と
印象からはまるで想像のつかない
大ハシャギする笑顔を思い返した

ギャップ萌えどころじゃない
"感情をまるで出さない子"
だとさえ思っていたのに

あー…ダメみたいだもう

トドメの一撃でオレは…
ドクドクする心臓の中にある
感情の正体を知ってしまったのだから

わかるようでわからない
あの不思議なアイルのことをもっと知りたい

それからオレは週末にちょくちょく
ソウタさんの元を訪れるようになった

食事に行ったり飲みに行ったり
終いにはアイルに店を任せて
食事に行ってみたり

沢山話をする
ソウタさんの話はやはり面白くて飽きなかった
顔が広くて色んな事に長けているマルチな男

そしてアイルの話をする
オレも…そう気持ちを隠してはいないし
ソウタさんもわかっていて
聞いてくれてるように思う
答えられないことには答えない
オレもすぐにそれがわかるから
変なことも言わない

…オレが言うのもナンだが
ソウタさんは信頼した人間にはとても手厚く
面倒見の良い人だと思う
すっかり頼れる兄貴みたいになっていた

アイルとは地元である隣の県で
近所に住んでいたアイルが猫を拾って
ソウタさんの当時勤めていた病院に来たのが
キッカケで知り合ったそうだ
アイルが8才の時だそう

感情こそあまり表に出さないが仕事が真面目で 人情的、動物の事に関しては
顧客に結構厳しい事も言うのだとか

『小さい時から、あんなカンジだったんですか?』
『~本質は変わってないと思うよ?』
『マジメで仕事熱心で…?』

ホンシツ…?ソウタさんのように
上手くいかないが探りを…やはり入れる

『ん~。ま、アソビがないな!今のあの子には』
『遊び…』

オレの言いたい事がわかるかのように
ソウタさんは自宅兼の客間で
一冊のアルバムを出してくれた
犬や猫、うさぎ…動物と写る女の子の写真

『これ…あの子ですよね?』

なんだコレ…めちゃくちゃ…

『…めちゃくちゃカワイイだろ~?』

ソウタさんが親バカみたいに笑う

アルバムの中には今からは想像がつかない程
眩しいくらいの笑顔の
アイルの写真ばかりがあった

整った顔やクシャクシャに笑う顔は
ちっとも変わってない

だけど…

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