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第3章 君の十色

『お酒は飲むの?』
『飲めない』

アイルを質問攻めして、ようやく店を出る

だけど初めて…
アイルは聞いたことに全て答えてくれた。


席を立つとアイルも財布を出して席を立つ。
おいおい
そんなのはカンベンしてくれ。

『いいから、いいから』
『…よくないよ』


『"オレの用事"で来たから。ご馳走させて?』
『…困るよ』


『まぁ困らないで。ね?』

出口を差してアイルを先に店から出す。


『…ごちそうさまでした』
『いいえ。お腹はもういっぱい?』


『すごく』
『少し歩こうか?』


うなずいたアイルを連れて緑地を歩く。
ボート…は誘いにくい、やめておこう。


『どこか行きたいとことかないの?』
『べつにない』


『動物園とかペットショップとか
好きじゃない?』

『キライじゃないけど…休みの日だから休む』


『?』
『かわいそうになったりとか…』


『~見ると"仕事"しちゃうんだ?
やっぱそのへん素人と違うね』

『考えないで行けばいいんだけど…
余計なとこ見ちゃう』


『なるほどね』

『ソウタさんは営利としない方針だから…
保護したり、そゆの…力いれてるし
私もずっとそれみてきてるから』


『オンとオフ しっかりしてんだな』
『べつに…』

大まわりに、しばらく緑地を歩いて
来た道を駅の方へと戻ると

あの店のショーウインドウが目の前にくる

アイルがチラっと視線を向けた気がして
オレもさりげにケースをみた

…昼間マネキンの着ていた服が
別のものに変わっていた

アイルを横目でみるが
特に…表情に大きい変化がない。

『ノドかわかない?』
『…』

『そこ。先入ってて?オレ少し用思い出して
すぐ行くから』

半ば強引にカフェに行かせた

…もう少し一緒にいたい

そして、少し…寄り道する。

『お待たせ。ソレ…何飲んでんの?』
『…ココア』

ストローをくわえながらアイルが答えた
少し意外だと思った

カフェで一息つく。

『…ニガくないの?』

オレのグラスのコーヒーをみて言う

『飲んでみる?』

アイルは首を横に振る

『まぁアレだ。オトナの味だ(笑)
~甘いの好きなんだ?』

『…べつに』

『なんだかんだでも"オコチャマ"だな(笑)』

少しからかうとアイルはムスッとした

こういう少しの表情の変化がたまらない

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