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第3章 君の十色

『ぁ…ありがとう…』

『自分の誕生日忘れるには ちょいと若すぎるんじゃないのか~?(笑)』

少しイジワルに聞く

『あの…今日って…もしかして…』

『ん…いや、たまたまだよ。ソウタさんに
偶然聞いただけだ。それが今日だったから
折角なら、ってな。一石二鳥ってことで』

チョット…チョットだけウソだが
嘘も方便…そう思ってほしい

オトメちっくの店に来たがってた
"ヘンな人"でいいから…。

チラリ…

アイルがオレを見上げると
小さいケーキを2つに割る

『一人で食べなよ』
『こんなに…たべれない…』

半円になったケーキを皿にとって
オレによこした

『5月生まれは頭がイイって言うよな』
『…あたし中卒』

またひとつ更新
今時めずらしい…。

『中学おわってすぐ働いたんだ?
高校行こうと思わなかったの?』

『行ったけど やめた』


『へぇ、そう?
けど優秀みたいだし?
大卒・脳内小卒より余程有意義でしょ?(笑)』

『…それって自分のこと?』



『…少しくらい 否定しないか~?;』
『クス…さぁ』

冗談めかしたけど少し本気だった

人の能力と言うのは学歴イコールではないし
アイルには、仕事の能力と言う意味での
魅力だって十分にある

ソウタさんにしてもそれを重々わかっているから一目も二目もおいて
その能力を買っているのだと思う。

うざがられるのを承知で
時が許す限りアイルを質問攻めしてみた。


『何の動物が一番好き?ぶっちゃけ?』
『人間以外なら何でも』


『あ、人間も動物だな。
世話してやんないの?(笑)』

『しない』


どうでもイイ話を織り混ぜて
さりげに聞きたいことを聞いたりする。


『でも若いうちからずっと働いててさ
遊びたくなったりとかしないわけ?
アイくらいの時なら~』

『べつに…ない』


『か…彼氏つくったりとか~…
青春っていうかさ』

おっと…イヤラシすぎたか?
べつにそういう意味ではなかったが
どこか露骨で
しまった、と思う。


『……望んでない』


少し遠くをみるように
呟くようにアイルが答えた

その一言は、オレは結構ズシッときて
チク…グサッときたのを覚えている。

でもオレが、オレなんかが思ってるより
遥かに深く重い
その言葉の意味をオレが知るのは
もっと…もっと後になってのことだった。

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