テキストサイズ

Best name

第4章 告白

それからオレは時々アイルにメールしたり
犬の散歩についていったり
遠すぎず近すぎない距離を保ち続けた。

アイルは相変わらずだが
メールをすれば必ず返事はくれた。
変わらず、飾りもなにもない短いメールを。


そんな関係…距離感に慣れてしまったのか
オレはとくに焦ってアイルを
自分のものにしたいなんて思わない…
そう思っていた気がする。


思っていただけだけど。


食事に誘えば付き合ってくれるし
オレはそんなアイルとの関係が
すごく心地よかった。


アイルの気持ちはわからないが
オレは自然といつも笑ってた。


〃ラーメンくいたい!〃
〃食べてくれば?〃



〃一緒に行こうよ。嫌か?〃
〃べつに〃



こんな調子だ。

日曜、時にはアポなしの呼び出しでも
アイルは応じてくれた。


『おはよ』
『うん…』


少し気だるい、眠そうだ。

やはり朝はニガテなのだろうか?
変わらずのTシャツにデニム。



だけど…やっぱり…?



『…なに?』

『ん…いや…』

この間のは気のせいじゃないのか。
アイルからは
かすかに甘い香りがする。

化粧品みたいな、ほんのりした。
シャンプーの匂いか?


『…いい匂い…すると思って』


間違うとスケベオヤジみたいな発言をしてしまう。


『?…』

『香水?』




『?あぁ…うん。集めるの好きだった』

『いつもつけてたっけ?』



香水集めか
初めて聞く アイルの趣味。


『休みの日だけ。動物には…良くないから』
『いろんなの使うんだ?』


『~…あつめたけど気に入ったのしか使わない』


さりげない、見えない所にオシャレをしている
アイルは、とても素敵な女性にみえた。


強すぎず、ほのかに漂う上品な匂いが
何とも心地よくて酔いそうだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ