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第5章 呪縛から…解き放て

オレは…ソウタさんに言うべきか迷った。
止められる気がしたから。


アイルに会いたい


どうしても会って話がしたかった。


アイルに電話をする…何度も。
出てはくれなかった
ダメ元でメールをいれた。



〃どうしても話したいことがある。
公園で待ってる。ずっと待ってる〃



半ば脅しだな?コレじゃ…

返事は期待せずに
アイルの家の側…あの公園へ急ぐ

木の下のベンチでアイルを待った
来る気配はない。

梅雨の蒸し蒸しした気温…
雲がかかって暗くなってくる。

ポツポツ…と雨があたってきた。
チクショー…

もう帰った方がいいか
と諦めた時



ザッザッザ…



足音がして傘がオレの上に差し出された。


『アイ…』
『…濡れるよ』

『…アリガト』



傘を受け取ってベンチから立ち上がる。

…何か、早く言わねーと。



『あのさ、アイ…』
『うち…』


『え…』
『うち…で』


冷たい雨にアイルの細い体が
少し身震いしているように見える

『あぁ…ごめん。じゃぁ…』

少し躊躇われたが
アイルの家に上げてもらった

アイルが渡してくれたタオルで濡れた頭を拭く。

『それ…使って。返さなくて良いから』

ドアに立て掛けた傘を指して言う
早く…行けってことか。
そして、二度と会わない気じゃないだろうな…?


アイルとキッチンのテーブルで向かい合う
椅子を引く音だけが響いた


『…ごめんなさい。連絡…しなくて』

『体…大丈夫なの?』
『うん…』

『まぁ…こう暑くっちゃ
食欲だって失せるよな。…ホラ』


買ってきたプリンをテーブルに置いた
アイルは首を少し横に振る。

『話…って』
『あぁ…あのなアイ…』

『…わかってる』
『え?』

『わかってる。もうわかってるから…
もういい。言わなくても』

アイルの部屋は以前来たときと
そう変わってはいないが

机や床に水のペットボトルや
薬が転がっている

少し…乱れた様子

机の薬を取り出してアイルがコクッと飲み込む
胸をなでるようにして…
リラックスさせるように。


『アイ…話をちゃんと聞いて‥?』
『わかってるから…もう帰って…』


『わかってないよ!…
オマエはちっともわかってない』


オレはテーブルの上でアイルの腕を掴んだ。

オレは

オレがしたいのは…


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