
アクアリウム
第2章 ダイオウグソクムシとの恋
「だめ、ダメッ…イッてしまう…!」
ニチュニチュと、粘液の混ざる音が厭らしい。
視界がチカチカと点滅し、果てを迎える。
滲む高田の姿。
「あっ…あぁあ――――――っ…」
横にぐったりと気を失うグソクムシの頭を撫でる。
今日1日の、グソクムシの表情から、何を心配しているのかは知っていた。
グソクムシの事は、たまらなく好きだ。
その不安を、この気持ちを伝えることで消してやりたい。
でも…その気持ちを伝えることは、出来ない。
「溺れているのは、俺の方なんだ……グソク…」
ガチャリと音をたてて、高田の上司の矢木が入ってきた。
「高田、館長がお呼びだ」
「はい…あ、矢木さん、こいつ…、頼んでもいいですか」
矢木は、固い表情で高田とグソクムシを見たあと、こくりと頷いた。
重厚な扉を開く。
目の前には、ベッドに腰かけた、館長の姿があった―――――――
