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無題

第1章 空から堕ちてきた天使



次の日、朝食を済ませ何気なくつけたテレビの大して面白くもないお笑い番組をぼんやりと眺めていた俺に珍しい来客が訪れた。
よぉ、とニヤケ面で元気そーだなと部屋の主の了承をとらずに我が物顔で入ってきたその人物は俺の幼なじみである大輝だ。
大輝は野球部でエースではなくともイケメンである為に女子からの人気が高い人物だ。

今日部活休んできてやったんだぞ、と手土産だろう荷物をテーブルに置くと真剣な顔で俺の顔を除き込んできた。


「顔色悪いな、ちゃんと飯食ってんのか?」

「お前は俺の保護者か」



俺のかーさんが心配してんだよ。と言葉を続けた大輝は小さく鼻で笑う。なんだか久しぶりのこの雰囲気に何処と無く心が和らいでいく。
この4日、たったの4日間で随分の精神力を削られていた気がする。いや事実削られていたのだろう。
変わりない学校生活の話をする大輝に心底安心にも似た感情が心を埋め尽くす。こんな何気ない会話でいつも笑っていたというのに、それが遠い昔のように感じた。


「で、お前いつ退院できんの?」

「さぁ?知らん。」

「はぁ?なんだよ、その返事,,,」


ここに来る前に買ってきたのだろう、缶ジュースを俺へ渡しながら怪訝な顔をする大輝。缶ジュースは俺が好きな某炭酸飲料のオレンジ味だった。


「なぁ、そんな事より井上さん、学校きてるか?」

「は?井上?いや、きてねぇけど,,,確か事故にあったとかなんとか」


みんな御見舞に行きたいと騒いだらしいが入院先を教えてくれない先生に今学校では井上さんに大しての色んなウワサが飛び回っているらしい。


「植物人間になっちまったーとか、顔がぐちゃぐちゃになったーとか」


「,,,.へぇ。」


「後こんなんもあったな。自殺未遂」



どくり、心臓が脈だった。プルタブをかるくひねり一口飲み物を口にする大輝はあんまりこの話自体に興味はなさそうだ。そういう噂話自体あまり好まない大輝は学校の噂というのものに疎い筈なのだが、こうも知っているとなれば最早校内で知らない人はいないくらいに浸透しきった噂なのだろう。
何処か複雑な気分であの日の光景を思い出す。あれはやっぱり、、






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