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恋と秘密と幼なじみ

第8章 夏の足音

夏が近付いてくると、よく「夏の足音が聞こえてくる」という表現を耳にする。

その言葉はあまりにも慣用句になりすぎて、陽姫は情緒も感じなければ、足音を実感することもなかった。

はじめにその言葉を考えた人は凄いと思うが、そういう表現というのは使われれば使われるほど、価値が薄れ、むしろありきたりな表現になってしまう。

日を追うごとにじりじりと暑くなる毎日は、「足音が聞こえてくる」というよりは、「にじり寄ってくる」というような恐怖感の方が似合ってるとさえ思えた。

つまり彼女は暑い夏があまり好きではない。
清々しい秋や、ぽかぽかしてる春の方が好きだった。

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