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恋と秘密と幼なじみ

第10章 夏の暑さと映画デート

「……ごめんね、祥吾君。やっぱ祥吾君の言う通りケータイ小--」
「感動したね!」
「え?」
「雪山で遭難した時は焦ったけど、あれがあったからこそ、二人は強く結びつけたんだよね」
「…………ま、まぁ、そうだね」

一人でうんうんっと頷く彼の瞳は、陽姫の見間違いでなければ少し潤んでいるように見えた。

彼が喜んでくれたのなら余計なことをいうのはやめておこう。
陽姫は大人の対応で「よかったよね、意外と」と相槌を打っていた。

映画の感想はそのあとの喫茶店でも続く。
陽姫があり得ないと思ったシーンを、祥吾がことごとく褒めるのには驚かされた。

窓の外は夏の午後の殺人的な熱気が漂っていて、景色が歪みそうなほど茹だっている。

それでも道行く人は多い。
外回りをしているサラリーマンは砂漠を歩くかのごとくに気怠そうに、カップルは暑さまでも愉しいのか眩しそうな笑顔で、友達ではしゃいでる子達は夏休みのはじまりを謳歌してるようだった

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