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スケートリンクと溺愛コーチ

第9章 アイススケートフェスティバル その3

ー杏莉sideー



凄かった。



これが柚ちゃんの演技を見て思ったこと。


レベル的には対して凄くないかもしれない。



だけどなぜか、一瞬で惹きつけられた。




負けた。素直にそう感じた。


柚ちゃんの演技が終わり、ワアアアッと聞こえる歓声を背にして外へとかけだした。




「え、ちょ、杏莉!?」




ラファがあわてて追いかけてくる。


人の少ないところを目指して走っていると、丁度リンクの裏側にあたる、ひらけたスペースにきた。





涙と悔しさがこみあげてくる。


今にも泣きそう・・・だけど。




「どう、だった?彼女の演技は」



「・・・負けた」




「うん」




「悔しい。悔しい・・・・っ!」





柚ちゃんが相手だからといって本気を出さなかった自分が恥ずかしい。



柚ちゃんはちゃんと本気で向かってきたのに・・・!






・・・・・泣きたい。泣き叫びたい。





私の気持ちをわかっているラファが、おいで、と手を広げる。



だけど、行かない。



「?杏莉?」



「今回は、泣いていいほど、頑張ってない・・・から。」



柚ちゃんの演技を見て、モヤモヤがなくなった。

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