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Christmas短編集

第3章 ささやかな幸せ

 大好きな彼、直樹(ナオキ)の隣。手を繋ぎ歩く。仕事からの慣れた帰り道。居心地のいい私の居場所。他愛もない話に花を咲かせる。ポツポツと滴が落ちる。雨が降るなど天気予報にはない。と、直樹は突然に私の顔を覗きこむ。


「なぁ、有希(ユキ)、別れようか?」


「何で?」


「俺……」


 直樹は、私の手をパッと離す。突如、浴びせられた言葉。理解できない。否、頭がついていかない。ポツポツだった滴は、すぐにザーザーと音を立てている。その後に続く直樹の声は、雨音にかき消される。


「なんて? 聞こえない」


「俺、転勤で遠くに行くんだ。東京。しばらく帰ってこれない。いつ会えるか分からない」


 頭が真っ白になる。行かないで、いかないで、イカナイデ。涙が流れ落ち、雨と混ざりあった。夕立が嘲笑う。

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