
- 前へ
- しおりをはさむ
- 次へ
virgin
第1章 鈴木 悠
友達からこれから死ぬと電話がかかってきた。
どうしたの?と聞いても、泣きじゃくって何も聞き取れない。ただ、もう死ぬだけは聞き取れる。
そのうち、男に浮気をされたと、そう聞こえた。
今から向かうから待って。と私が言っても、悲鳴に似た泣き声は更に増すばかりで、私の話など聞く耳も持たなかった。初めて聞く、女の泣き叫ぶ声。
話がまともに出来ないまま彼女は電話を切った。
私は慌てて学校を抜け出し、電車に乗り込む。
授業の終わりのチャイムが私を急かした。
学校に来ていないから、きっと家にいるだろう。
そう思い電車を降りて走って彼女の自宅に向かう。
駅に続く坂を登って直ぐの小さな家。
彼女の家は母子家庭で、母親はスナックを経営している。親子ふたり暮らしだ。それでも母親は男の家に転がり込んで、彼女はほぼ一人暮らしをしていた。彼女の彼氏は至って普通の男で背が高く中肉中背。黒髪の短髪。地元の専門学校に通っていた。
あんな普通の男が。容量もクソもなさそうなあの男が。浮気をするような男だとは思わなかった。きっと彼女も想像もしていなかったろう。
男のために死ぬとか馬鹿みたい。そう呟きながら。
でもきっとそうじゃない。
自分より誰かを本気で愛し、誰かのために死にたかった。きっと心から彼女の事が羨ましかった。
どうしたの?と聞いても、泣きじゃくって何も聞き取れない。ただ、もう死ぬだけは聞き取れる。
そのうち、男に浮気をされたと、そう聞こえた。
今から向かうから待って。と私が言っても、悲鳴に似た泣き声は更に増すばかりで、私の話など聞く耳も持たなかった。初めて聞く、女の泣き叫ぶ声。
話がまともに出来ないまま彼女は電話を切った。
私は慌てて学校を抜け出し、電車に乗り込む。
授業の終わりのチャイムが私を急かした。
学校に来ていないから、きっと家にいるだろう。
そう思い電車を降りて走って彼女の自宅に向かう。
駅に続く坂を登って直ぐの小さな家。
彼女の家は母子家庭で、母親はスナックを経営している。親子ふたり暮らしだ。それでも母親は男の家に転がり込んで、彼女はほぼ一人暮らしをしていた。彼女の彼氏は至って普通の男で背が高く中肉中背。黒髪の短髪。地元の専門学校に通っていた。
あんな普通の男が。容量もクソもなさそうなあの男が。浮気をするような男だとは思わなかった。きっと彼女も想像もしていなかったろう。
男のために死ぬとか馬鹿みたい。そう呟きながら。
でもきっとそうじゃない。
自分より誰かを本気で愛し、誰かのために死にたかった。きっと心から彼女の事が羨ましかった。
- 前へ
- しおりをはさむ
- 次へ
