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ガラスの靴がはけなくても

第3章 理性と本能



手渡されたミネラルウォーターを飲む。思っていたより喉が渇いていたようで、一気にボトルの水は半分程になってしまった。

少しだけ落ち着いてきた頭をフル回転させる。

とりあえず、今一番にすることは…


「度々申し訳ありませんでした!!」


頭を下げることだと判断した。

ついこないだもこんなやり取りをした覚えがある。どうしてこうも部長の前でやらかしてしまうんだろう。


どんな経緯でここにいるのかは全く分からない。それを聞くのも怖い。
だけど、記憶がない私が迷惑をかけたことはきっと間違いない。
香織さんには後で謝るとして、先にこの状況をどうにかしないといけない。
出来るだけ関わりたくないと思ってるのにどうも関わる様なことをしてしまう自分が恨めしい。

とにかく。早くここから、部長の家から出て行きたい。
立ち上がって、帰ろうとした瞬間ーー



「お邪魔しまし――…きゃッ」


体が反転した。私がよろめいて倒れたのは、酔っていたからではない。だって、引っ張られた。腕を思い切り。

その結果、私はソファーに座る部長の上に不恰好な姿で乗っていて。


「誰が帰すって言った?」


耳を擽る重低音に身体が跳ねた。



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