ガラスの靴がはけなくても
第1章 眠れぬ夜
「体は大丈夫です!わざわざ部長の手を煩わせてしまっただなんて…私……」
咄嗟に正座して、頭を下げる。
寝起きのはずが、目も頭も完全に覚めていた。
ただ、覚めたと言っても混乱する頭はまともには動かない。
突然倒れた挙げ句、ここまで運ばせたなんて。
どれだけ迷惑かけてるのよ!
「…ひゃっ!」
「うん。熱はないみたいだな」
び、ビックリした…!
部長の大きな掌がおでこにあてがわれたことに驚いて声を上げてしまった。
そろりと見上げると、私の反応に笑いを堪えているみたいで。
それを柔らかい笑顔にすると、
「謝ることはない。ただし、体調が悪い時には無理しないこと。分かった?」
そう言ってくれて。
「…はい」
なんだかそう答えるだけでいっぱいいっぱいだった。