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ガラスの靴がはけなくても

第4章 揺れる



忘れられる訳がない。
覚えてない訳がない。


あんなに熱く溶かされて、あんなに優しく触れられて、あんなに激しく乱れたのに。


部長だって分かってて言ってる。
私が覚えてない訳がないって。
なのにわざとそう聞く部長はずるいと思った。


だけど、それ以上に――私はずるくて最低だ。


"覚えてない"


そう言おうと思ってた。


酔ったせいにして、部長のせいにして、部長に反応した私を忘れたことにしようとした。


どこまでも自分本位。

だから、そんな自分の勝手さにとっさに謝ったんだと思う。


でも、そうでもしないと気持ちが崩れそうだった。
触れられて否定できない私をどう説明付けていいのか自分でも理解出来なくて。


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