
君が桜のころ
第2章 花影のひと
綾佳はほっとしたように春翔に笑いかける。
「…大丈夫ですわ、春翔様」
「随分話し込んでいたよね。…何話していたの?」
焦れたように春翔が尋ねる。
「亡くなったお母様の話しです。清賀様はお母様と何度かお会いになったそうで、懐かしんでいらしたの。それだけですわ」
「…ふうん…それにしては妙に熱っぽく綾佳ちゃんのこと見つめていたけどなあ…。
…あ!まだ見てるよ!もうっ…」
やきもきする春翔をよそに、綾佳はそっと庭園を見遣る。
礼人がシャンパンを片手に、朝霞と話しながらやはり綾佳の方を見ていた。
綾佳と目が合うと、優しく微笑む。
「あ!笑いやがった!…綾佳ちゃん!こっち来て!」
春翔が苛立ったように綾佳の手を取り、引っ張る。
「…春翔さん…?」
驚く綾佳を、春翔は珍しく無視して強く手を握りしめたまま、廊下を突っ切り中庭へと連れ出した。
「…あ、あの…春翔さん…」
「だめ。今だけは僕の言うこと聞いて!酷いことなんかしないから。…二人きりになりたいだけなんだから」
怒ったように言う春翔に、綾佳はおずおずと告げる。
「…あの…手が…痛いんです…」
春翔ははっと振り返り、慌てて手を離す。
「ごめんごめんごめん!痛かった⁈」
春翔は綾佳の手を取り、済まなそうにそっと撫でる。
「…大丈夫です…」
綾佳は取りなすように小さく笑う。
「…ごめんね、綾佳ちゃん…」
しょげている春翔に綾佳は首を振る。
「いいんです。…春翔さんは私を心配して下さったのでしょう?」
「…う、うん…心配…だし…その…」
もじもじしていた春翔が不意にキリッと表情を引き締め綾佳の手を握りしめると、真摯な口調で告げる。
「…綾佳ちゃん、本当はもっとちゃんとしたタイミングで言いたかったんだけど、そんなことしていたらライバルに先越されるから、今言うね」
「…は、はい…」
「…僕は綾佳ちゃんが好きです!大好きです!綾佳ちゃんとお付き合いしたいし…あの…あ、綾佳ちゃんと結婚したいです!」
綾佳の瞳が大きく見開かれる。
「…春翔さん…」
ふっと春翔の口調が弱気になる。
「…綾佳ちゃんが僕のことを何とも思っていないことはよく分かってるよ…」
「…そんな!…私、春翔さんが好きですよ…?春翔さんといるととても楽しいです!」
「うん、それは友達として…だよね。
…恋じゃない…」
困ったように俯いた綾佳に春翔は優しく肩を抱く。
「…大丈夫ですわ、春翔様」
「随分話し込んでいたよね。…何話していたの?」
焦れたように春翔が尋ねる。
「亡くなったお母様の話しです。清賀様はお母様と何度かお会いになったそうで、懐かしんでいらしたの。それだけですわ」
「…ふうん…それにしては妙に熱っぽく綾佳ちゃんのこと見つめていたけどなあ…。
…あ!まだ見てるよ!もうっ…」
やきもきする春翔をよそに、綾佳はそっと庭園を見遣る。
礼人がシャンパンを片手に、朝霞と話しながらやはり綾佳の方を見ていた。
綾佳と目が合うと、優しく微笑む。
「あ!笑いやがった!…綾佳ちゃん!こっち来て!」
春翔が苛立ったように綾佳の手を取り、引っ張る。
「…春翔さん…?」
驚く綾佳を、春翔は珍しく無視して強く手を握りしめたまま、廊下を突っ切り中庭へと連れ出した。
「…あ、あの…春翔さん…」
「だめ。今だけは僕の言うこと聞いて!酷いことなんかしないから。…二人きりになりたいだけなんだから」
怒ったように言う春翔に、綾佳はおずおずと告げる。
「…あの…手が…痛いんです…」
春翔ははっと振り返り、慌てて手を離す。
「ごめんごめんごめん!痛かった⁈」
春翔は綾佳の手を取り、済まなそうにそっと撫でる。
「…大丈夫です…」
綾佳は取りなすように小さく笑う。
「…ごめんね、綾佳ちゃん…」
しょげている春翔に綾佳は首を振る。
「いいんです。…春翔さんは私を心配して下さったのでしょう?」
「…う、うん…心配…だし…その…」
もじもじしていた春翔が不意にキリッと表情を引き締め綾佳の手を握りしめると、真摯な口調で告げる。
「…綾佳ちゃん、本当はもっとちゃんとしたタイミングで言いたかったんだけど、そんなことしていたらライバルに先越されるから、今言うね」
「…は、はい…」
「…僕は綾佳ちゃんが好きです!大好きです!綾佳ちゃんとお付き合いしたいし…あの…あ、綾佳ちゃんと結婚したいです!」
綾佳の瞳が大きく見開かれる。
「…春翔さん…」
ふっと春翔の口調が弱気になる。
「…綾佳ちゃんが僕のことを何とも思っていないことはよく分かってるよ…」
「…そんな!…私、春翔さんが好きですよ…?春翔さんといるととても楽しいです!」
「うん、それは友達として…だよね。
…恋じゃない…」
困ったように俯いた綾佳に春翔は優しく肩を抱く。
