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ありがとう

第1章 ありがとう

「クロなベンチの下に倒れるようにしてた」

「猫は死に際に一人ぼっちになるから」

 私はぽつりと呟きクロを抱いた。

「クロ、幸せそうな顔している。きっと柊に“ありがとう”って思ってるんやで」

「そうかな? ならいいな。クロ、こちらこそありがとう」
 涙を流しながら、だけど精一杯の笑顔でクロに言った。

「柊、これからは俺がクロの分まで話聞いてやる。支えてやる。柊は一人ちゃうで」

「ん、ありがとう」

「はな、帰ろか!」

「うん」

 出会いもあれば別れもある。それは必然で。十年ちょっとという長い間をクロと過ごした。この日々は忘れない。そしてクロがいなくなっても一人じゃない。優真という大切な友達に出会えたから。クロ、優真、ありがとう。



End
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