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誰も見ないで

第8章 記憶


そして次に俺は突然立ち止まった正樹にデコピンされた


「痛っ……!?」
「前にも言ったけどね、湊斗」
「は、はい……」


正樹、怒ってる?


「俺にとっては湊斗の方が大切なんだから、自分の方をちゃんと大事にして欲しい!」


大きめの声と強い口調で言った正樹は「それに……」と口調を緩めて続ける


「瑞稀君だって、今の湊斗を見たらきっと怒るよ。辛いときはちゃんと辛いって言いなよ……じゃなきゃ、助けられないだろ……俺……今回のこと、話聞くぐらいしか出来てない……」


正樹の言葉の語尾に少しだけ涙が滲んだのがわかって、俺悪いことしたんだってすごく実感した


「うん……ごめん……正樹。ちゃんと相談するから」


正樹の頭を撫でると、「俺が慰めに来たはずなのに!」と文句を言われる


最近はずっと瑞稀君のことばっかり考えてて、周りのことってあんまり視界に入ってなかったけど

俺ってすごく恵まれてる

父さんや母さんや、正樹が大切に思ってくれてて
幸せ者だ


「ねぇ正樹」
「なんだよ」
「ありがと。俺、もう少し頑張るよ」
「……俺の話聞いてた?」


拗ねた感じの正樹に思わず笑ってしまう

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