誰も見ないで
第8章 記憶
「晩御飯うちで食べて行っても多分大丈夫だよ?」
俺が言うと、帰り支度をしながら正樹が「申し出はありがたいんだけど」と言ってから
「実はこの後用事があってさ」
と言った
「そうなんだ。じゃあ仕方ないね」
帰り支度の終わった正樹が立ち上がるのと一緒に俺も立ち上がると、瑞稀君も少し遅れて立ち上がった
そして3人で玄関まで行く
「それじゃあ、お邪魔しました」
「あら正樹君帰っちゃうのぉ? 晩御飯食べて行かない?」
「用事があるんだって」
母さんが「残念だわ〜〜」と大げさに嘆いてる横で俺も正樹と一緒に靴を履く
「そこまで見送ってくるね」
「別にいいよ? 湊斗」
「いいのいいの。俺がもう少し話したいだけ」
俺の言葉に仕方ないなって感じで笑った正樹と一緒に家を出て、少し歩いた
すると
「湊斗」
と声をかけられる
「ん? なに?」
「あんまり無理するなよ。瑞稀君より早く湊斗がダメになったら元も子もないんだからね」
優しいな、正樹は
でも
「瑞稀君の方が大変なんだから、俺が頑張らなきゃ、でしょ?」
俺の方を向いた正樹に微笑みかけると、呆れたようなため息を吐かれる