テキストサイズ

誰も見ないで

第8章 記憶


正確には忘れ物っていうか、落し物かな?

すっごい前に旅行に行って正樹に買って来たお土産だ

なんかこう、よくお土産やさんで売ってるご当地もののキーホルダー

何かの拍子にチェーンが切れちゃったみたいだけど……正樹、まだこんなのつけてくれてたんだ


「ふふ……」


突然笑い出した俺を不思議そうな目で見つめる瑞稀君


「ごめん。それ、俺があげたやつなんだ。まだつけてたんだなって思って」


俺がちゃんと説明すると瑞稀君は納得してくれたみたいだけど、どこか浮かない顔


「瑞稀?」
「……何でもない。帰ろう」
「? うん」


明らかに何かあった様子だけど、俺に話してくれる気はないのか歩き始めてしまった


こういう風に突然様子がおかしくなること多いよね
何か考えてるのかな


不安なような、何かを期待させられるような
そんな行動に少し振り回される


「今日の晩御飯何かな」


話題がなくなってしまったから、無理に探し出して話しかけると


「ハンバーグだって」


とさっきまでの態度がなかったみたいに返事が返ってきて安心した


「そうなんだ。母さんのハンバーグ好きなんだよね」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ