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誰も見ないで

第8章 記憶


でも、好き


思いは止められない


その考えは正樹君とお兄ちゃんが話してるのを見る度に強くなって

顔に貼り付けたような作り笑いばっかりが上手くなってしまった


それでもお兄ちゃんには毎日顔を合わせなきゃいけないから、僕にとっては地獄でしかない


そして僕は思いついたんだ


もういっそ
嫌われてしまった方が楽なんじゃないかって



毎日が辛くて
笑顔を見る度に苦しんでいた僕の

馬鹿な思いつき


それでも、お兄ちゃんの部屋をノックする手を止める冷静な考えなんてなかった


「どうかした?」


って優しく微笑んでくれるお兄ちゃんの考えを僕が知る由もない

記憶がないんだから仕方ないなんて
ただの言い訳だ


「僕、正樹君のこと、好きになっちゃった……かも」


そんな嘘を
心にもない言葉を


口から出して



お兄ちゃんの



「………………だめ、やだ」




違う


湊斗君の目から、涙が落ちるのを見た



そして僕は、どれだけ湊斗君に心配をかけて迷惑をかけて

どれだけ傷つけたのか


どれだけ湊斗君が好きで、湊斗君に僕がどれだけ大切にされていたのか


全てを思い出した


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