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初恋

第3章 記憶のかけら



「こんなに寒い日は──…」


遠い目をして、ぼそぼそ喋ってる。


まつげ、長いんだな。俺は彼女の横顔を黙って見ていた。


「……思い出した」


何をだよ。



「こんな寒い日は、いつも……」


「……」


「くっついてた。あの、人に」



缶を両手で包んだまま、彼女がピタリと動きを止める。


そして次の瞬間に、まるで撃ち抜かれたかのように前ぶれなく大声で叫んだ。




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