初恋
第3章 記憶のかけら
「思い出したーー!!」
うっわ びっくりした。
危うく俺のほうが頭からお茶被るとこだよ。
たまたま周りに人いなかったからセーフだったけど、あんまり目立つことするなよ白い目向けられるから。
ひやひやしてる俺の気も知らずに
君は……
「思い出したわ!あの人のこと!」
出会ってから一番の笑顔で、俺のほうに振り返ったんだ。
綺麗な黒髪が、スカートみたいにパサッと広がる。
「わたしには大切な人がいるの。その人はわたしと一緒にすんでるの!」
「……は?」
「だから早く帰らなきゃ…っ…あの人が待ってる家に」
取り戻した記憶のかけらが、彼女の全身を鮮やかに満たしている。
それがいかに素晴らしい輝きを放っているのかを、彼女はその表情で俺に訴えかけていた。